いい学校出て、いい会社に入っても、会社はあなたを守ってくれないかもしれない。
保護者のみなさま
5月29日(日)河合サテライトレッツ半田校では、「キャリア競争を生き抜くための自己表現論」を開催いたしましたのでご報告いたします。第一回ということで気合をいれてのご報告です。
今回のキャリアセミナー開催への想いは前ポストである「【高校生向け講座】キャリア競争を勝ち抜く自己表現論を開催します」をご覧いただければ幸いに想います。
終身雇用と年功序列
今回のセミナーでは、現在日本的経営の代表的な制度である終身雇用制、また年功序列制が崩れ始めている点から入りました。
終身雇用制というのは、会社の調子が悪くても首にしないよ、ということで、年功序列とは会社の調子が悪くてもお給料は毎年昇給するよ、ということです。日本が調子が良かったときはこれで良かったし、これが労働力を囲い込むのに有効だったのです。今年悪くても、ガマンすれば来年はよくなる時代だった。しかし時代は変わりました。これは現代社会や政経を学んでいないとなかなか難しいと思い、大分時間を割いて話をしました。
次に、それに伴う、総合職、専門職、一般職(註)の割合の変化、また各雇用体系に求められる役割について話をしました。お兄ちゃんや姉ちゃんが就職活動をしていた、または普段から家族でそういう話をする、という生徒以外にはすこし難しい内容だったと思います。
全体的になにかひとつでも「行動」を持ち帰っていただければそれで今回のセミナーは成功だったと思います。
総合職という終身雇用では今後、
①海外の人材
②人工知能をはじめとする自動化
がライバルになってくる点を強調しました。
加えて、総合職で働く割合が減っているという状況のもとで、この総合職という待遇を求めるということはキャリア形成において「熾烈な争い」を自らすすんで受け容れるということに他ならないと説明いたしました。
対して、有期雇用(いつか会社を去る雇用形態)にあたるであろう専門職、一般職においては即戦力であることが求められます。終身雇用(総合職)であれば、人材はやめない前提で、会社は「新入社員」という素人からゆっくり育てて利益をもたらす「プロ」にしてくれます。しかし、会社を去っていくことが決まっている人に会社は教育投資をしないでしょう。せっかく育ってきて利益をもたらしてくれるようになった人が、育った段階で次の会社に転職してしまうかもしれないからです。新人教育にお金を出さず、体力をためておき、スカウトやヘッドハンティングの費用に回し待遇を保証すれば、少ないお金で前の会社が育ててくれた人材を獲得することができます。
そのため、有期雇用においては、教育済みの新人をとる必要が出てきます。
註:なお、わかりやすくするため下記のように表記しております。
総合職…長期蓄積能力活用型グループ
例)管理職、総合職、技能部門の基幹職専門職…高度専門能力活用型グループ
例)企画、営業、研究開発等一般職…雇用柔軟型グループ
例)一般職、技能部門、販売部門
➖日本経営者団体連盟 新時代の日本的経営より
「人」が要らない仕事は危うい
いかなる雇用形態も人間関係や人間のみが持つ感性(決断、直感、機微など)が今後ますます重要となることを強調しました。先回のポストで専門職の代表である医師の仕事でさえ、という話をしましたが、教師もまた同じです。効率的に知識を貯めるのであれば、その道のプロがいます。いまではそれで何千万と稼ぐ映像予備校の講師もいます。それでも、学校の教師が尊ばれるのは、「知識を貯める」ということが教師という職の本質ではないからでしょう。
教師の仕事の本質は教育であり、それは、教育基本法第一章第一条に書かれている通り、「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」ということです。勉強を教える、また「知識を貯める」ということは、「人格の完成」のための手段の一部なのでしょう。年号をいくら憶えても人格は完成しません。予備校講師ではできないことなので、教師は尊敬されているのだと思います。「知識を貯める」だけの教師は今後、肩身が狭くなっていくかもしれません。
また事務職志望だから、公務員志望だから、ということをいう生徒も多いのですが、そういう仕事こそ、細やかな人間関係が必要です。またもし人間関係が必要ない仕事であるなら、そもそも将来なくなる仕事ですし、そうでなくても待遇はだいぶ悪くなるでしょう。職場が安定ということは、その場所をでたら不安定ということですし、逆に不安定であれば、どんなところでも生きていけるという生存の安定性は高まるでしょう。
※今までのキャリアセミナーで参考にさせていただいた本を本棚にまとめていますのでご興味あればご利用ください。
今回の参考図書 『2020年 激変する大学受験!』西川純著 学陽書房
だから今、自己表現論
それを踏まえて、今回話したのは人間関係について、自分がどうやって自分の「論理」を、人間関係を破壊せずに達成するか、という話をしました。みんなに気に入られるわけではありません。今回話したのは自己開示の相互互恵性、ジョハリの窓、事実と解釈の違い、中途半端な総体としての自分を受け容れる、コミュニケーション能力とは「相手を動かす」力、といったテーマです。本来なら一年掛けて各論を掘っていくのですが、今回はカタログ的に紹介するに止めました。時間があれば、”idiocracy credit(特定人物固有信用)”、形式知と暗黙知についても話をしたかったのですが、これには時間が及びませんでした。
次回お時間をいただける、また生徒側から詳しく聞きたいという話があれば、補講という形で対応したいと思います。
保護者のみなさま、この度も送り迎え等お時間を作っていただきありがとうございました。
またお手数とは思いますが、こないだどんな話をしたのと、ご飯の時などに気にかけていただけると嬉しいです。お子さんは伝えようと、自分のなかに落とし込もうとします。塾だけでは絶対に教育は完成しません。友人、ご家族、また周りの環境からゆっくり影響を受けていくと信じております。
ご多用とは存じますが、一言、「こないだの日曜日のセミナーどんな話をしたの?」と声を掛けていただければ幸いです。